■仮想化とは?そのメリットは?
VMWareを代表とする仮想化ですが、書くまでもないですが1台のサーバの上で複数のOSを稼働させることが出来る技術です。近年、急速に市場に受け入られ導入する企業も増えていると聞いています。急速に市場に導入され始めた仮想化ですが、一体どんなメリットがあるの?箇条書きにすると以下のような感じでしょうか。
- 物理サーバ台数を減らすことによる電気代の削減、物理スペースの確保
- OSを迅速に作成/削除することが出来る
- OS全体のバックアップが容易となる
中でも最大のメリットは2番でしょうか。 逆にデメリットは以下のような感じでしょうか。
- システム集約による障害発生時の影響拡大
- パフォーマンス劣化
- 管理ポイントの増加による運用負荷の拡大
■仮想化による可用性の拡大?
仮想化するメリットの一つにVMWare HA/FTを使用した可用性の拡大ということをよく聞きます。これはゲストOSが停止した際に別のホストにゲストOSを移行するというもので冗長性を確保する技術です。(VMWare HA/FTはサービス監視は不可)
本当に可用性が拡大するのでしょうか?
過去10年間サーバ運用してきた中でハードウェア障害を除いてOSごとクラッシュしたということは一度も経験がありません。よほど胡散臭いアプリケーションなどを動かしていない限りこれは起こらず、ほとんど意味が無いと私は考えます。
■仮想化への道のり
私の周りではよく見られる傾向なのですが、VMWareを代表とする仮想化ソフトはゲストOSを格納・管理するためのソフトウェアの箱であり、実際のサービスをエンドユーザに提供するのはVMWareの中で稼働するゲストOSです。
LinuxサーバやWindowsサーバなどを十分熟知せぬままVMWareを勉強されている方が結構見受けられます。逆ではないでしょうか。Linux/Windowsサーバを熟知し、経験やノウハウなどを積んで上でVMwareを勉強するべきだと考えます。
■仮想化によるコストシミュレーション
世間一般的にはサーバの台数が30台を超えると仮想化したほうがメリットがあると言われています。ここではサーバの台数が10台/20台/30台の場合で実際の金額のシミュレーションをしてみたいと思います。使用するゲストOSは全てFreeLinuxで5年間運用するという前提です。
・非仮想化の場合
近年ではハードスペックの進化および低価格化が進み、ハードウェア保守を5年間つけたとしても30万あればかなりいいサーバが購入できます。それぞれの台数では以下の計算式になり初期コストを求めることができます。
30万 × 10台 = 300万
30万 × 20台 = 600万
30万 × 30台 = 900万
毎月発生するランニング費用として電気代が挙げられます。これはおおよそですが、各サーバ200W程度だと考えます。電気代のシミュレーションとして以下のサイトがあります。
http://www.ienakama.com/tips/page/?tid=353
各台数の5年間の運用費(電気代)は以下のようになります。
10台の場合(2000W) : 年間36万 (5年で180万)
20台の場合(4000W) : 年間72万 (5年で360万)
30台の場合(6000W) : 年間108万 (5年で540万)
・仮想化の場合
仮想化する場合はサーバスペックをかなりあげたものが必要です。デュアルCPU、大量メモリなど。FCでストレージと接続するのであればFCインターフェイスなども必要です。それを加味すればおおよそ1台につき70万程度だと考えます。また、仮想化する場合、概ね10台を1台に集約できますので、仮想化ホストは1/2/3台です。さらに確率はかなり低いと思いますが、ハードウェア再起不能状態に備えて予備機を1台用意しておき、クラスター構成を組んでおきたいので+1台で2/3/4台のケースで考えてみます。
まずサーバの初期コストは以下のようになります。
70万 × 2台 = 140万
70万 × 3台 = 210万
70万 × 4台 = 280万
仮想化する場合は共有ストレージが必要です。これもコストに加えなければなりませんが厳密に計算することができないので仮想化ホストの台数に応じて以下のように仮定します。
2台の場合 : 350万
3台の場合 : 450万
4台の場合 : 550万
さらにVMWareのライセンス費用も必要です。これはEditionやCPUの数に依存しますが、最も安値であるStandardでCPUが二つの場合という前提です。さらにクラスターを組む場合、vCenterも必要なのでこれも考慮する必要があります。
2台の場合 : 150万
3台の場合 : 200万
4台の場合 : 250万
月発生するランニング費用として電気代が挙げられます。これはサーバの電気代とストレージの電気代が必要です。
サーバ側はスペックが上がっていますので300Wで計算します。ストレージはそれぞれ300W/500W/700Wで計算します。
2台の場合(900W) : 年間16万(5年で80万)
3台の場合(1400W) : 年間25万(5年で125万)
4台の場合(1900W) : 年間34万(5年で170万)
以上を踏まえて、仮想化と非仮想化のコスト比較表が以下となります。
ゲストOS数 | 仮想化の場合 | 非仮想化の場合 |
10 | 720万 | 480万 |
20 | 985万 | 960万 |
30 | 1250万 | 1440万 |
30台の場合は仮想化したほうがトータルコストは安くなります。後は冒頭で書いたメリット/デメリットを加味して導入する価値があるかどうかを判断することになりますが、どれだけの価値があるのかはその組織に依存することになります。