■StackWiseの概要
Catalyst3750がリリースされた2003年頃からStackWiseというテクノロジーが世の中に広まり始めました。これは複数の物理スイッチ を専用ポートを使って接続し論理的な一台のスイッチとして管理するというもので最大で9台のスイッチから構成されます。その複数台のスイッチの1台がスタックマスターと なり全体の管理を行います。スタックマスター以外のスイッチはスタックメンバーと 呼ばれます。
物理的には異なるというところから筐体を跨いで特定のスイッチに足を2本だしてChannel化といったことが容易になっており、昔ながらのSTPや HSRPによる可用性の向上はStackWiseに置き換えられる傾向にあります。近年ではCatalyst2960Sシリーズでもスタックが可能となり ましたが、2960Sでは有償オプションなのに対して3750シリーズでは標準オプションとなっており、スループットや最大構成数などの面で3750のほうが優れているという違いがあります。
3750シリーズといっても初期のものから3750Eや3750v2、最近では3750Xや3850など細かな機種の違いがあり、それぞれでスタックの帯 域幅などに違いがあります。これらを以下の表にまとめてみました。
StackWise |
StackWise Plus | StackWise-480 |
|
機種 |
Catalyst3750/3750Gなど |
Catalyst3750E/3750X |
Catalyst3850 |
スタック帯域幅 |
32Gbps |
64Gbps |
480Gbps |
StackPower |
× |
○ |
○ |
モデル |
IP Base IP Service |
LAN Base IP Base IP Service |
LAN Base IP Base IP Service |
上記のStackWise-480はその他のStackWiseとスタックを構成することはできません。また、3750XのLAN Baseモデルは同一機種 ( モデル ) のみスタック可能です。その他は混在可能ですが基本的にスタックを組む際には以下の要件を満たす必要があります。
● SDM Templateの一致
● IOSバージョンの一致
IOSのフィーチャーセットも一致させる必要があると思われがちですが、これは異なっても問題なくスタックは組めます。但し、スタックマスターがIP Serviceで稼働していたものが何らかの障害でLAN Baseのものに置き換わった場合などには動作に影響がでますので可能ではあるものの非奨励となっています。
StackWiseのソフトウェア的な設定は 当然必要ですが、それ以前に物理的な接続 ( スタックポートの接続 ) がまず必要です。よくシスコのサイトなどでたすき掛けで接続されている画像などがあるのでそのように接続しなければならないと思われている方がいますが、 これはどのように接続してもOKです。
■スイッチプライオリティの設定
スタックポートを接続すると各スイッチが論理的に一つとなりスイッチの中の1台がスタックマスターとなって論理的に一台となります。このスタックマスター を選定する際に基準となるのがスイッチのプライオリティで値が最も高いものがスタックマスターとなります。この値を確認するには以下のコマンドを実行しま す。
# show switch Switch/Stack Mac Address : aaaa.bbbb.cccc H/W Current Switch# Role Mac Address Priority Version State ---------------------------------------------------------- *1 Master aaaa.bbbb.cccc 1 1 Ready |
上記はスタックを組んでいない3750Xで実行した例です。デフォルトは1でこれを変更するには以下のコマンドを実行します。
(config)# switch 1 priority 4 |
上記でプライオリティを4に変更したスイッチとデフォ ルト1のままのスイッチをスタックした場合、プライオリティ4のスイッチがスタックマスターになります。
# show switch Switch/Stack Mac Address : aaaa.bbbb.cccc H/W Current Switch# Role Mac Address Priority Version State ---------------------------------------------------------- *1 Master aaaa.bbbb.cccc 4 1 Ready 2 Member dddd.eeee.ffff 1 1 Ready |
■スイッチ番号の設定
3750シリーズでは最大で9台のスイッチをスタック可能なのでスタック番号は1~9の範囲ということになります。スタックをしないケースもありうるので デフォルトでは番号1になっています。一旦スタックを組んで本番運用に入ればスイッチ番号を変更することはまずないのですが、何らかの事情でスタックを解 体して個別にそのスイッチを再利用する場合などには番号を1にしたい場合があります。その場合は以下のコマンドでスイッチ番号をリナンバーできます。下記 ではスイッチ番号2から1に変更する場合の例です。
(config)# switch 2 renumber 1 |
上記コマンドを実行してそれが即座に反映され るわけではなく一旦再起動を実施した後に反映されます。
またスタックを組んでいるスイッチで特定のスイッチのみを再 起動したい場合などは、このスイッチ番号を指定することによりそのスタックメンバーのみを再起動することが可能です。下記はスタックメンバー2のみを再起 動するコマンドです。
# reload slot 2 |
■その他のshowコマンド
Stackの状態を以下で紹介するshowコマンドで確認可能です。下記では3750Xの2台スタックの出力例です。
# show switch detail Switch/Stack Mac Address : aaaa.bbbb.cccc H/W Current Switch# Role Mac Address Priority Version State ---------------------------------------------------------- *1 Master aaaa.bbbb.cccc 4 1 Ready 2 Member dddd.eeee.ffff 1 1 Ready Stack Port Status Neighbors Switch# Port 1 Port 2 Port 1 Port 2 -------------------------------------------------------- 1 Ok Ok 2 2 2 Ok Ok 1 1 |
# show switch stack-ring activity Sw Frames sent to stack ring (approximate) ------------------------------------------------ 1 25929716503 2 1500875850 Total frames sent to stack ring : 27430592353 Note: these counts do not include frames sent to the ring by certain output features, such as output SPAN and output ACLs. |
# show switch stack-ring speed Stack Ring Speed : 32G Stack Ring Configuration: Full Stack Ring Protocol : StackWisePlus |
# show switch stack-ports summary Switch#/ Stack Neighbor Cable Link Link Sync # In Port# Port Length OK Active OK Changes Loopback Status To LinkOK -------- ------ -------- -------- ---- ------ ---- --------- -------- 1/1 OK 2 50 cm Yes Yes Yes 1 No 1/2 OK 2 50 cm Yes Yes Yes 1 No 2/1 OK 1 50 cm Yes Yes Yes 1 No 2/2 OK 1 50 cm Yes Yes Yes 1 No |
■IOSバージョンアップ手順
Stackを組む前提としてIOSバージョンの一致がありました。運用が始まってから何らかの理由によりIOSのバージョンを上げたい場合、スタックを組 んでいる機器全てに対して同時にバージョンアップを行う必要がでてきます。この場合、IOSファイルはアーカイブされたtarファイルを用意し、下記の archiveコマンドを利用することにより全台に対してバージョンアップを行うことができます。
# archive download-sw tftp://xx.xx.xx.xx/【ファイル名】.tar |
上記のdownload-swの後にオプションをつけることが可能です。指定可能なオプションの中でよく使用するものを以下に紹介します。
オプション |
説明 |
/allow-feature-upgrade |
IP BaseからIP Serviceなど、フィーチャセットを変更する場合につけるオプション |
/destination-system X |
特定のスタックメンバーのみアップグレードする場合にスタック番号を指定。 |
/force-reload |
イメージをダウンロードしたあとで無条件にリロードする |
/leave-old-sw |
古いIOSを残したまま新しいIOSをダウンロードする |
/overwrite |
古いIOSを新しいIOSで上書きダウンロードする |
/reload |
変更された設定が保存されていない場合を除きダウンロード後に再起動 |
例えば、古いIOSを残したまま新しいIOSをダウンロードしたい場合は以下のコマンドを実行します。
# archive download-sw /leave-old-sw tftp://xx.xx.xx.xx/【ファイル名】.tar |
実務を行っていてありがちなのはフラッシュメモリの容量が不足していて既存のものを消去してから新しいものを流し込む、といった手順を踏むことがよくあります。/overriteをつけてもうまくいかないといった場合には一旦削除してから新しいものを流し込むとうまくいくかもしれません。その際の既存 IOS削除コマンドが下記となります。
# delete /force /recursive flash:【ディレクトリ名】 |
ちなみにflash:の後に何も指定しなければフラッシュの中を全て削除します。
また、binファイルを直接流し込んだ際にはboot system switch X flash:コマンドでbinファイルを指定する必要がありましたがtarファイルの場合は必要ありません。再起動することでそれが反映されます。